私が慣れない海外暮らしを始めて間もない頃、
古紙をアレンジして作られた綺麗で古風な封筒が届いた。
当時はまだお会いしたことがなかった仲だったのに、
慣れない海外生活を労わるお便りと共に、
ちょっとしたおまけのような、お茶漬けやふりかけ等が1つ2つ同封されていた。
ちょうど日本が恋しくなっていた時期に、とてもあったかい気持ちになった。
帰国後、彼女と初めてお会いした時にその手紙のお礼を伝えた。
初対面でも緊張せずに話せる人で、飾らない屈託の無い顔で笑ってくれた。
その後、何かしらの集まりで数回顔を合わせることがあった。
いつも穏やかに笑っていて、皆から親しまれ、場を和ませていたなあ。
彼女は生前、新聞のお悔やみ広告を自ら準備しており、
亡くなった翌日に掲載されたそうだ。
それによると、昨年9月に子宮がん(ステージⅡ)が見つかり、
11月に入院手術をしたとのこと。
しかし、今年6月に再発、転移してしまったこと、
近くに親戚がいないため葬儀は行わず、香典や弔電、供花等を遠慮すること、
そして、お世話になった病院に献体をする旨が記されていた。
最後に、楽しくお付き合いいただき感謝していると結ばれていた。
病気療養について、一部の人以外には告げていなかったそうだ。
私と同時期に入院していたなんて、お互い知る由もなかった。
彼女がどんな女性だったのか、どんな人生だったのか、考えずにはいられない。
プライベートな事は何一つ知らないけど、きっとまだ40代でお若い方だったはず。
なんて強くて、潔い、生き方なんだろう。
彼女の遺志を尊重し、来月メンバーで質素にお別れ会をするそうだ。
心よりご冥福を祈る。
彼女の笑顔を思い出す。